<本日のスープ〜株式投資をめぐる三重奏〜>の13皿目は
m@さんです。
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rennyさんから投資信託についての感想を訪ねられたのを受けて、前回まろさんが日本の投資信託はブランド構築を考えてこなかった希有な業界と書かれていました。
私が始めて投資信託を買おうと思い、口座開設したばかりの大手証券会社で取り扱っている投資信託を一通り目論見書と運用レポートを読み終えた時に感じたのも運用会社の個性がないなという事でした。個人でもできる日本株の運用を託すのだからこういう投資哲学で運用するんだという個性があるものだと思っていたのですが、実際にポートフォリオを見てみると似たような銘柄が上位に名を連ねていて運用会社毎の個性というものはあまり感じませんでした。
そこから、どういう運用をしようとしていて実際にそれがなされているのか確認できるファンドを買いたいという流れになったのですが、運用会社が個性を持っていないという他にもう一つ問題に感じていることがあります。
それは、投資信託購入のハードルを下げた一方で制度がわかりにくいままという点です。
かつて投資信託を購入しようとしたときは証券会社で購入する必要がありました。証券会社にわざわざ口座を開こうとする時点で預金とは違う世界へ足を踏み入れる覚悟もあったかと思いますが、今では一般の人にとって身近な金融機関である銀行などでも普通に投資信託を扱っています。また、ネット証券などでは500円から積立ができるようになるなど投資信託を始めるにあたってのハードルはものすごく下がりました。
銀行で預金だけしていた人は元本が保証された世界でできるだけ高い金利の商品を求めていれば良かったのですが、いまや銀行で預金の金利で満足ができないと投資信託での投資を勧められる時代です。
銀行にお金を貸して利息という名前の金利を受け取る預金と違い 、投資信託ではみんなから集めたお金をまとめて投資をして成果をみんなで分け合う仕組みです。そこには期待されるリターンの裏側にリスクが潜んでいるのですがその辺の理解が投資家側に不十分であったことによる不幸な事例がニュースでたびたび取り上げられます。
過失相殺なしで信託銀行が全面敗訴「難聴の高齢女性に投信販売で違反」 - 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary
みずほ側に賠償命令、分配型投信「説明が不適切」 東京地裁 :日本経済新聞
投資信託1万口あたりの値段という基準価額や分配金という制度は明らかにわかりにくいものなのですが、そこを理解してもらおうとしないままこれから儲かりそうなのはこういう投信ですとか、分配金が多いのはこちらの商品ですといったセールスがなされているところに不幸な出来事が発生する原因があると思います。
販売している方にも基準価額が高い投資信託は割高な投信といった根強い誤解があったり、やたらと投資信託の仕組みが複雑化したためどういう時に利益が出るのか売る人にもわからない商品も乱立しています。
投資信託という商品自体は便利でいいものだと思うのですが、投資商品という意味で最低限の仕組みなどは理解してもらう必要があります。今のところは販売側の説明不足という点が焦点になっていますが「貯蓄から投資へ」(個人的にはあまりしっくり来ないところなのですが)を叫ぶのであれば、より身近な商品としてわかりやすい設計に変えないとわかりにくい商品をただ買いやすくしただけというかえって危険な状態になっています。
過去の12皿です。
<1皿目>
「本日のスープ(仮)」はじまるよ!
「投資をめぐる三重奏(仮)」はじまるよ!
「マットーネ :mattone(仮)」はじまるよ!
<2皿目>
「本日のスープ〜株式投資をめぐる三重奏〜」でいかがですか?
<3皿目>
おいしさ=味×心/本日のスープ3皿目
<4皿目>
株を持つという事は自分が関係者になること/本日のスープ4皿目
<5皿目>
「株式投資」:「安く買って高く売る」こと?それだけ? /本日のスープ5皿目
<6皿目>
投資と資産運用の素因数分解/本日のスープ6皿目
<7皿目>
株式投資はじめてものがたり/本日のスープ7皿目
<8皿目>
株式投資が世界を、未来を変えているかも/本日のスープ8皿目
<9皿目>
セレンディピティ/本日のスープ9皿目
<10皿目>
利益の源泉は"ありがとう"/本日のスープ10皿目
<11皿目>
研いで出てくるのは塗り重ねたもんだけ/本日のスープ11皿目
<12皿目>
時代遅れの投信業界を目覚めさせたい/本日のスープ12皿目
ぜひ御賞味ください。