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<本日のスープ〜株式投資をめぐる三重奏〜>です。
99皿目を担当するのは ”投資を楽しむ♪”のまろさんです。
前回の1皿でm@さんが言及された、つみたて投資専業の証券会社「tsumiki証券」。10年後に今を振り返った時、大きな転換点として認識されるのではと。というのもIT革命後の日本の投資信託をめぐる動きを振り返っていたら、
- 2000年頃に誕生したネット証券と独立系運用会社
- 今年2018年のつみたてNISA制度とtsumiki証券
この2つをひとつの線でつなぐこともできるように思えてきたから。
見識のある個人投資家が嫌悪感をいだく、従来の投信ビジネスモデルは以下のようなものだ。
投信を販売する証券会社が主導して、グループ内の運用会社と結託し、旬のテーマの投信を作っては潰す。顧客には約2年に1度の回転売買を進めて、販売手数料を稼ぐ。顧客はカモにされるばかりで投資の裾野は広がらず、運用会社も長期投資の腕を磨くこともできない。
今なおこの業界で未解決の問題で、ここ数年は金融庁が年次の「金融レポート」で繰り返し批判し、昨年には「顧客本位の業務運営に関する原則」を制定。顧客の利益を軽視する金融機関は淘汰されるべき!と強い姿勢で臨んでいる。
だが若いうちからの資産形成という観点であれば、この20年で上記の課題は着実に改善されていったように思う。
課題解決の一端を担ったのが2000年頃に登場した、インターネット専業証券や大手金融グループに属さない独立系運用会社だ。店舗を持たないネット証券は、販売手数料ゼロで信託報酬も低廉なインデックスファンドの拡充に抵抗がなく、また販売会社を通さず自社の投信を直販する運用会社は、顧客の長期的な資産形成に資する投資信託を設定していった。
こうして現在の30〜40代の資産形成層には、インデックスファンドを中心にした積立分散投資が定着しつつある。ただしあくまで意志を持って資産形成に取り組んだ一部の層に限られた話だ。このままでは投資に踏み出せない層との格差が大きくなってしまう。
ネット証券は顧客の資産を毀損するような押し売りはしないが、たとえばSBI証券、楽天証券ともに約2,600本の投信を並べているだけ。ここから自分で選べと言われたら、投資未経験者は尻込みしてしまう。対象投信を絞ったつみたてNISA制度の創設は、こうした問題に対処するための政策だったとも言えるだろう。
しかし当初は50本程度に絞られていたつみたてNISA対象もしだいに数が増え、今や150本を超えてしまった。ここに新たなビジネスチャンスを見出したのが、つみたてNISA対象の投信から4本のみを厳選して販売するtsumiki証券、ということになるだろうか。
上記のように約20年を振り返ると、新規参入によって、資産形成層の投資環境は改善が進んでいる。しかし銀行や証券会社の窓口での取引をメインとしている高齢者の環境は、20年前から時計の針は止まったままだ。日本の個人金融資産の6割を60代以上が保有していることから、投信ビジネス全体の改善は道半ばといったところだろうか。